現代の欧米では「自らの証」としてサインを用いますが、サインが主流になるのは19世紀以降になってからです。中世のヨーロッパでは読み書きができる人々は限られており、書面には印章が用いられていました。サインというものが公的な次元に現れてくるのは15世紀から16世紀にかけてであり、その後もサインと印章が併用されていきます。このように見ていくと、世界の文明がはじまって以来、印章は「自らの証」として社会生活の中で欠くことのできない大切な存在であったことが解ります。古代メソポタミアで誕生した印章は、オリエントからエーゲ文明、ギリシャ・ローマ文明によってヨーロッパに広がり、またアジアにおいては古代中国を経て日本に伝えられていきました。今日、私たちが手にしている印章には、実に7500年にも及ぶ世界の文化のはるかな歩みが深く刻まれているのです。 |