平安時代に入ると私印が用いられるようになります。これは高位の貴族だけに許された印章で、書類だけでなく蔵書などにも捺されました。さらに、平安時代の後期になると花押(かおう)が登場します。文字通り「花のように美しい印」であり、独自性が際立っていたこともあって後鳥羽上皇をはじめとする天皇たちが公文書にもこれを用いるようになります。花押は書判(かきはん)の別名があるように判とサインの双方の役割を担っていました。このような流れは鎌倉時代にも受け継がれていきます。武家文書の大半が書状に花押が捺されるようになります。これは平安時代の前期まで受け継がれてきた印章制度が揺らぎ、藤原氏をはじめとする武家たちによる新たな印章の時代がはじまる象徴的な現象でもありました。また、僧侶や文人の間では落款印が流行していきます。

図版出典 / 国史大辞典 吉川弘文館


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