戦国時代になると天下統一を夢見る武将たちは、花押ではなく、それぞれ独自の個性にみちた印章を用いるようになります。その鎧兜や旗印などと同じく、自ら用いる印章にも権威を強く押し出そうとしたのです。たとえば、武田家は「龍の印」、上杉家は「獅子の印」、北条家は「虎の印」といった具合です。この他にもローマ字を使った印章として黒田長政の「Curo NGMS」などが名高く、キリシタン大名であった大友宗麟はイエズス会の記号である「IHS」と洗礼名「FRCO」を組み合わせた印章を刻んでいます。戦乱の炎の中を疾風のように駆け抜けた織田信長の「天下布武」の印章も有名です。美濃稲葉山城を攻略した直後につくられたもので、天下統一への悲願が込められた印章です。ちなみに、豊臣秀吉の印章は直径4cm程度の小さな円形印で、今日でも判読不可能な文字が彫られています。彼にだけにわかる深き想いが込められた印章だったのかもれません。

図版出典 / 国史大辞典 吉川弘文館


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