紀元前5世紀の頃のギリシャ・ローマ世界では、甲虫をかたち取った背中の丸い「印」が広く用いられていました。はじめは神々の姿をモチーフにしたもが多く見られますが、次第にギリシャ・ローマならではの感性や美意識を反映したエロス(ギリシャ神話の愛の神)やアフロディア(エロスの母神と恋愛の神)なども出現してきます。これらの印はインタリオと称され、貴石などに陰刻で描かれていました。やがて、ローマ時代になるとカメオと呼ばれる陽刻も多用されるようになります。その多くは装飾としての意味合いが強く、当時の名工たちによって数多くの作品が創り出されました。インタリオもカメオも共に際立つ芸術性を誇り、そのごの世界の「印」の文化に大きな影響を与えていきます。ギリシャ・ローマ文明は印章においても古代文明のひとつの頂点にあったといえるのではないでしょうか。

図版出典 / ハンコロジー事初め 新関欣哉著


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